チタン、ゴールドフィルド(K14GF)、メッキ製品とは
前回のお話の通り、愛芽のジュエリーは本来地金が持つ意味や良さ、機能性を大事にしている為、メッキコーティングはしていません。
メッキコーティングやゴールドフィルドのアクセサリーは安価で手軽に購入できる製品でもあるので勿論メリットもあります。そもそも、ゴールドフィルドやメッキコーティングにはどんな特性があるのかを知らない方もいらっしゃると思うので、取り扱いはしていませんが、アクセサリー選びの参考にしていただければと思います。
メッキコーティングの製品について
メッキのアクセサリーは元々非常に多く出回っていて、主に真鍮にシルバーやゴールドのメッキコーティングを施した安価なアクセサリーでご存知の方は多いと思います。
中でも銀メッキは中に含まれるニッケルによってアレルギーになりやすい為、メッキアレルギーの方が増えたのはこのせいかなと愛芽は思います。私自身、若い頃は安くてかわいいので銀メッキのアクセサリーを沢山着けていましたが、結局メッキアレルギーになってしまい、シルバーの良さを身をもって感じている一人です。金属アレルギーについてはまた改めて記載したいと思います。
●剥がれたメッキや壊れたメッキ製品の修理
一時、銀(スターリングシルバー)は使用しているうちに変色するため、銀の製品に更に銀メッキコーティングをしているアクセサリーもありました。変色が嫌な方はメッキ製品でもよいかと思いますが、メッキはいずれ剥がれるもので、実際はまたコーティングするには修理代が購入した価格よりも高くなってしまう場合が殆どです。実際愛芽の修理経験では一旦火をあてて全てコーティングを剥がしてから、表面を磨き、業者にコーティングの依頼をするので手間代もかかってきます。更に石など入っていたら一旦外してコーティングを剥がさなくてはならないので更に手間がかかり、正直一からお創りした価格とさほど変わらなくなり、ディテールも崩れやすいので、お断りする事が殆どです。又、メッキ加工は、量産の際に100個なら100個まとめて一気にメッキをするので、一つ辺りの単価が安く生産性が高いというものなので、1個も100個まとめた価格と同じ加工価格になります。
真鍮製品にメッキコーティングしているものは、破損した場合は一番簡単な接着という方法となり、ただの応急処置となってしまうので、完璧な修理はできずまた直ぐに破損してしまう恐れがあります。完璧な修理を望むと購入した価格より確実に高くなると思います。愛芽でもいくつか修理のご依頼を承りましたが、どうしてもという事で結局、接着の応急処置しかできないものばかり。専門の修理屋さんがあるのならそちらにお任せした方がいいかなと思いますが…そもそもあるかがわかりません。
こうした製品でとても大事にしている物であれば、創りも破損しやすいものが大半なので、とにかく壊さないように大事に大事に取り扱うのが一番です。
ゴールドフィルド(k14GF)の製品について
さて、ここ数年のうち瞬く間に人気となっているK14GF(ゴールドフィルド)という比較的最近の素材。特にビーズアクセサリー等のハンドメイドの作家さんや、量産のアクセサリーを販売しているショップの多くが、ゴールドフィルド(K14GF)という素材を用いています。
一般的な説明としては、主に真鍮(黄銅・ブラス)などの合金でできた金属を芯として、総重量の20分の1にあたる5%の金をコーティングした素材で、鍍金(メッキ)とは区別され、"金張り"とも呼ばれています。ゴールドフィルドは、本物の金の輝きをそのままに金と較べると安価で手軽に楽しむことが出来る素材として定評があります。それでも金の高騰によりゴールドフィルドも値上がりしているようです。
日本ではK14(14金)が多く使われゴールドフィルド=K14GFと思われていますが、海外ではK12GFやK18GFもあるようです。(コーティングに使われる金の種類によって異なります)
ゴールドフィルドは、金鍍金(ゴールドプレイテッド)と比べてコーティングの層が厚く、熱圧力で金をコーティングしているため、耐久性の面においても優れており、金メッキのようにすぐにメッキが剥げてきてしまうような心配は殆どありません。 と言われていて多くの作家さんが、安心してゴールドフィルドを多用しているのではないかと思いますが、実際に販売されている方の情報によりますとゴールドフィルドも結局は剥げてしまうようで、実際に着けた方の情報には、ゴールドフィルドは、金とは異なり、朝晩肌身離さず付けっぱなしにした状態で1ヶ月過ごすと、明らかにチェーンがくすんでくるとの事。これはメッキ製品も同じで、以前愛芽でもピンクゴールドのメッキチェーンを磨いてほしいとお預かりした際、汗や皮脂による汚れで生じたくすみは洗浄である程度綺麗になりましたが、購入時のような輝きは戻りませんでした。更なる情報としてはこの時、液体クリーナーを使うととても綺麗になる代わりに圧着した金が落ちやすくなるそうです。
次第に、くすみが生じるたびにクリーニングをしても綺麗にならない状態に陥り、先ほどのメッキのように元のキラキラした金色の状態には戻りません。指輪は摩擦が多いと劣化が早くなるそうです。更に日焼け止めのクリームやローションに含まれる油分や薬効成分がゴールドフィルドに付着すると劣化やくすみ・変色の原因となります。
これらに共通するのは、皮膚から出る汗や皮脂と結合してチェーンが汚れたり、摩擦で金張り部分が少しずつ剥がれて真鍮が少しずつ出てくるようです。
ただしピアスはつけっぱなしにしていてもワイヤーも金具も全くと言っていい程劣化しないようですので、ピアスならゴールドフィルドのものでもよいかと思います。
・間違った情報
ゴールドフィルドを扱っている作家さんで、ゴールドフィルドを紹介する際に「金鍍金の100倍の厚さで圧着している」と書いておられる方もおられますが、これは完全に間違っているらしく、実際はせいぜい20倍程度で、「GFはアレルギーが起こりにくく、安心してお使い頂けます」という一文を添えている方も多いですが、真鍮アレルギーのある方の場合は金でコーティングしてあっても真鍮は真鍮ですのでアレルギー反応が起こることはあるようで、更にK9やK10のように金の純度が低い金(金合金ともいいます)でアレルギーが起こる方の場合は、こちらもゴールドフィルドでもアレルギーが起こる可能性があるそうです。
●ゴールドフィルド製品を長く使用するには
なるべく長く綺麗な状態を保つには、皮脂や汗が付いた時にこまめに洗うこと、そして泡立てた台所用洗剤もしくは泡タイプの洗顔料などでチェーンを優しく泡でもみ洗いし、しっかりと水ですすいでペーパータオルで水分をふき取って乾燥させます。
水に弱い石や薬剤に弱い石(パールやターコイズ、珊瑚など)を使っているものについては、チェーンの部分だけ水に中性洗剤を混ぜたものをしみこませた綿棒で丁寧にクリーニングします。市販のクリーナーは、薬剤で汚れを溶かすだけでなく少しずつ鍍金を剥がしていくので、こまめに使うと色落ち・くすみの原因になります。
それでもチェーンのくすみや汚れが取れず、金古美のような色合いになってしまった場合はチェーンやワイヤーを新しくする以外はありません。
尚、こちらもメッキ製品よりも修理はより困難と思います。破損したら破棄するよりありません。
チタン製品
チタンとは、元素記号 「Ti」で表される銀灰色の金属で、その名称はギリシャ神話に登場する巨人「タイタン」が由来といわれていて、チタンを含む天然鉱物としては、「チタン鉄鉱」や「ルチル」などがあり、中でも「チタン鉄鉱」はチタンの主原料であり、工業的資源として重宝されているそうです。
チタンが工業などで幅広く使用されるようになったのは戦後のこと。チタンは主に「純チタン」と「合金チタン」に分けることができます。このうち「純チタン」は、不純物を微量しか含んでおらず、その性質などにより「JIS1種」から「JIS4種」までの4種類に分類されます。一方、「合金チタン」は利用用途に合わせてほかの合金元素を添加したもので、添加する元素の種類によって強度が増すなど性能が変化します。
こちらも貴金属の分野では最近出回るようになり、軽く、硬く、錆びにくいという事から、注目されましたが、加工技術の難しさから、10年前はかなり高いイメージがありました。
それでも現在は加工技術も発達してチタン製品のアクセサリーも比較的購入しやすい価格で販売されています。ピアスの金具やパーツ等でかなり安価なものはほぼチタンコーティングや合金チタンではないかなと思います。
ただチタンは金属アレルギーの方にはお勧めで、チタンはあらゆる金属アレルギーにおいて反応がほぼ出ないと言われています。勿論コーティングのものは、いずれ剥がれてしまいますが、愛芽もこのチタンコーティングのピアス金具に限っては、金属アレルギーのお客様で、希望があるお客様にはこれに付け替えてお渡しさせて頂いております。シルバーアレルギーお客様でピアスを購入されたいお客様は、今までピアス金具だけK18の金具に変えてお創りしていましたが、やはり高額です。なかなかそこまでして着けられないというお客様もいて、その場合のみチタンコーティングの金具に付替えさせて頂いております。
●アクセサリーにおいての地金の価値
アクセサリーの素材に使われる金属の地金だけで考えると、 シルバー・ステンレスよりも高くプラチナ・金よりも安い金属とされていて、チタンは貴金属素材というよりも、レアメタルに該当しますが、チタンは 一般の質屋さんや貴金属店ではリサイクルができないため 恐らく質屋さんに持っていっても0円だそうです。技術的にも他の金属よりも加工が難しいため、一部の工場でしか加工ができなく流通経路がとても狭い金属です。
●修理はできる?
今のところ、愛芽も含めて、一般的なジュエリー店では、加工が困難な為、ほぼ修理ができないといってもいいと思います。というのも ジュエリーとして一般的な金やプラチナを加工する道具と、 チタンを加工する道具が全く違うこと (硬すぎるので、一般的なジュエリーを作る道具では壊れるため)、 そして加工する際チタンの性格をよく見極めていること(わかっていること) これが、チタンを加工する際のいちばんの決め手になるそうでうす。 そして、金やプラチナのジュエリーに比べるとはるかに工程数が多く時間が掛かり、削るだけでも一苦労だと言われています。そもそも貴金属の素材ではなく、本来レアメタルの一種なので、地金自体の仕入れや流通経路が他の金属より限られています。 チタンアクセサリー専門店にお願いするのが一番かなと思います。
最後に…
愛芽は自身のコンセプトにおいて長く愛用して頂きたいという想いがあります。いつかアンティークと呼ばれるように。だからこそ長く使用するという事において、修理やメンテナンスは必要不可欠です。今までメッキ製品であっても愛着をもって修理にと持ってこられるお客様が多々いましたが、上記の理由で加工がしずらい為、その殆どは応急処置しかできません。(またすぐ壊れてしまいます)結果、廃棄せざる負えません。通常の家庭から出た金属は埋め立てゴミになってしまい環境にも良くありません。前回の話にもあるように、愛芽が使用している銀、金、プラチナはまた溶かして再利用ができるのがメリットです。削った粉も全て瓶に入れて保管しています。大切な資源。
もともとの銀ならわざわざメッキ加工してないないものの方が、修理もしやすく、変色したら定期的にクリーニングすれば良いので結果的に経済的です。
それでも、安くて生産性もあり、剥がれるまでは変色せず、デザインも豊富です。
全く使わない、買わない方がいいというわけではなく、リサイクル等も考えながら、今一度創る側も、買う側もこうした知識を頭に入れてつつ、食品と同じように数あるうちの一つでもいいので金属、素材について環境を考えたものを選んでみると、身体にも、環境にも、そして地球にも優しく、一つグレードアップしたオシャレを楽しめるのではないかなと愛芽は思います。
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